VILLAGE通信 vol.11 埼玉県
秩父銘仙、ほぐしながら織る大胆な柄
関東編の4回目は埼玉県です。埼玉には岩槻人形や春日部桐笪笥など5品目の伝統的工芸品がありますが、今回は県北西部の山あいで育った絹織物、秩父銘仙を取り上げます。大正から昭和初期にかけて、女性の普段着やおしゃれ着として広く親しまれた織物です。
「鬼秩父」から「銘仙」へ
ちちぶ銘仙館によると、秩父の織物の起源は、崇神天皇の時代に知知夫彦命が養蚕と機織りの技術を伝えたことにあるとされます。山あいで田畑の少ない秩父では養蚕が暮らしを支え、出荷できない規格外の繭から、自家用の丈夫な「太織」が織られました。その丈夫さから「鬼秩父」とも呼ばれたといいます。
明治20年ころからは「めいせん」の名で売られ始め、明治30年代初めに「銘仙」の表記に統一されました。最盛期には、秩父市民の約7割が織物に関わる仕事に就いていたとされます。
仮に織り、染めて、ほぐしながら織る
秩父銘仙の柄を支えるのが「ほぐし捺染(なっせん)」です。明治41年(1908年)、秩父出身の坂本宗太郎が特許を取得した技法で、工程は次のように進みます。
- 整えた経糸に、緯糸をざっくりと粗く仮織りする
- 仮織りした経糸に、型紙を使って柄を染める
- 織るときに仮織りの緯糸を手でほぐしながら、本来の緯糸を打ち込む
ほぐしながら織ることから「ほぐし織り」とも呼ばれます。経糸に直接柄を染めるため表と裏が同じように染まり、経糸と緯糸の色の組み合わせによって、見る角度で色が変わる玉虫のような表情が出ることもあります。秩父銘仙は2013年(平成25年)12月26日に国の伝統的工芸品に指定されました。
工業試験場の建物で学ぶ
秩父市の「ちちぶ銘仙館」は、1930年(昭和5年)に建てられた旧埼玉県の繊維工業試験場の建物を改修し、2002年1月に開館しました。本館・工場棟・倉庫は1998年に国の登録有形文化財となっています。ノコギリ屋根の工場棟では、染めや織りの体験ができます。
要点
・規格外の繭で織った丈夫な「太織」がルーツとされる
・明治41年(1908年)に特許を得たほぐし捺染で、大胆で華やかな柄が可能に
・最盛期には秩父市民の約7割が織物関係の仕事に従事
・2013年12月26日に国の伝統的工芸品に指定
前回は群馬県の桐生織を訪ねました。VILLAGE通信 vol.10 群馬県はこちら。
参考:ちちぶ銘仙館、秩父市、埼玉県、伝統的工芸品産業振興協会
——Value Village編集部