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ハンガーに並んだデニムの衣料品

フランスで「超高速ファッション」への負担金が始まった
1点最大12ユーロ、2030年には20ユーロへ

服の「安さ」と「速さ」に、国がはっきりと線を引きました。フランスで2026年7月8日、繊維産業の環境負荷を減らすための法律(法律第2026-602号)が成立し、7月9日に官報に掲載されました。狙いは、膨大な数の新商品を短いサイクルで投入する、いわゆる「ウルトラ・ファストファッション」です。特定のファッション形態を名指しで対象にした法律は、世界でもこれが初めてとされています。

「超高速」の定義は2つの条件

フランス政府の事業者向け解説によると、法律が対象にする「ウルトラ・エクスプレス・モード」は、次の2つを同時に満たすものです。

  • 新しい商品の品番(リファレンス)を大量に市場へ出していること
  • 修理を促す仕組みが乏しいこと

対象になるのは、新品の衣料品・靴・家庭用リネン・家庭向け繊維製品です。古着などの中古品の販売は対象外とされています。単に「安い服」を罰するのではなく、「出す数の多さ」と「直して長く使う仕組みの薄さ」の組み合わせに着目している点が特徴です。

9月から1点ごとの負担金、1月から広告禁止

柱は3つあります。

  • 負担金(2026年9月1日から):フランスでは衣料品のメーカー・販売者が、回収・リサイクルのための環境分担金を払う仕組み(拡大生産者責任)があります。今回の法律で、対象製品の分担金に上乗せ(ペナルティ)がかかるようになりました。金額は2026年に1点あたり0.25〜12ユーロで、2030年に向けて段階的に引き上げられ、最大20ユーロになります。ただし税抜販売価格の50%が上限です。
  • 広告の禁止(2027年1月1日から):対象製品の広告や、イベントの協賛・商品の露出など間接的な宣伝が禁止されます。インフルエンサーが有償・無償を問わず紹介することもできなくなり、違反には10万ユーロの行政罰金が定められています。販促での「無料」という言葉の使用も禁じられます。
  • 表示の義務:オンラインで販売する事業者は、再利用・修理・リサイクルを促すメッセージ、製品の社会・環境への影響、配送の環境負荷を表示し、製造国を価格と同じ大きさの文字で、価格の近くに示す必要があります。

細かな運用は今後の政令で詰められる部分も残っていますが、「価格」「広告」「表示」の3方向から同時に手を打つ設計になっています。

ポイント
フランスの新法は、①新商品の数が非常に多く②修理の仕組みが乏しい服に、1点0.25〜12ユーロ(2030年に最大20ユーロ)の負担金を上乗せし、2027年からは広告やインフルエンサーによる宣伝も禁止します。中古品は対象外です。

背景にある「年36億点」という数字

なぜここまで踏み込んだのか。フランスで衣料品のリサイクルを担う団体Refashionが2026年6月に公表した調査では、2025年にフランスで販売された新品の衣料品・靴・家庭用リネンは約36億点と、前年から1.5%増えました。1人あたりの衣料品の購入は平均43点で、前年より1点多くなっています。

購入の7割は低価格帯の商品で、その平均価格は8.30ユーロ。一方、中古品の流通量も前年比4.8%増と伸びています。報道によると、市場の伸びの多くはオンライン専業の販売者によるもので、その販売量は12%増だったといいます。「安く、たくさん、すぐ届く」服の増加が、回収・リサイクルの仕組みの処理能力を上回りつつある——それが法律の出発点です。

EU全体の流れの中で読む

フランスの動きは単独のものではありません。EUでは、衣料品の売れ残りを廃棄することを禁じるルール(EUで始まった売れ残り廃棄禁止)や、繊維製品の生産者に回収費用を負担させる制度(EUの繊維EPR)の整備が進んでいます。フランスは、そのEPRの分担金を「服の作り方・売り方」によって重く・軽くする仕組みを、いち早く本格的に動かした国といえます。

日本の買い物にすぐ影響が出るわけではありませんが、「何点出したか」「直せるか」「どこで作ったか」が服の価値を測る物差しとして法律に書き込まれたことは、これからの服選びのヒントにもなりそうです。値札の横に製造国が同じ大きさで並ぶ——そんな売り場が、ヨーロッパでは当たり前になろうとしています。

参考:フランス政府 service-public.gouv.fr「Loi n° 2026-602 du 8 juillet 2026」解説(2026年7月)、Refashion「Baromètre de la consommation textiles et chaussures 2025」(2026年6月)

——Value Village編集部