
VILLAGE通信 vol.22 静岡県
駿河竹千筋細工、丸い竹ひごが描く千の線
The text of this article is in Japanese.
中部編の8回目は静岡県です。静岡県には駿河雛具や駿河雛人形といった国の伝統的工芸品もありますが、今回は静岡市を中心に作られている「駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)」を訪ねます。表紙の写真は、静岡市駿河区の体験施設「匠宿」に並ぶ手提げと行燈。細い竹の線が幾重にも重なり、光がやわらかく透けて見えます。
東海道の旅人が持ち帰った「駿河細工」
静岡市によると、静岡県中部は昔から良質の竹がとれる土地で、弥生時代の登呂遺跡にも竹製品の痕跡が残っています。江戸時代、駿府(いまの静岡市)は東海道の要の宿場でした。参勤交代の大名や旅人たちのあいだで、竹で編んだ籠枕や笠、花器、虫籠が評判となり、「駿河細工」の名で全国に知られるようになりました。
いまの技法の出発点とされるのが、天保11年(1840年)です。岡崎藩士の菅沼一我(すがぬま いちが)が駿府に立ち寄った際、細く割った竹を丸く削ぐ「丸ひご」の技を伝えたと伝えられています。明治維新のあとには、江戸から駿府へ移り住んだ旧幕臣たちも竹細工に携わり、産業としての基礎が固まっていきました。
平たいひごではなく、丸いひご
多くの竹細工の産地は、竹を薄く平らに割った「平ひご」を編んで形をつくります。これに対して駿河竹千筋細工は、細く丸く削った「丸ひご」を、編むのではなく一本一本、枠の穴に差し込んで組み上げていきます。千本の筋(線)で形を描くことから「千筋」の名があります。
竹ひごを熱で曲げてなめらかな曲線をつくる技や、竹の輪どうしをつなぐ「継ぎ手」の技法もこの産地ならではのものです。静岡市の解説では、一人の職人が材料づくりから仕上げまで、ほぼすべての工程を手がけるのが特徴とされています。1976年(昭和51年)、通商産業大臣(現在の経済産業大臣)から国の伝統的工芸品に指定されました。
要点
・江戸時代、籠枕や虫籠などが東海道の旅人に「駿河細工」として人気を集めた
・天保11年(1840年)に伝わった「丸ひご」の技が、いまの技法の出発点
・平ひごを編むのではなく、丸ひごを一本ずつ組んで千筋の線をつくる
・1976年に国の伝統的工芸品に指定、2018年には静岡竹工芸協同組合が地域団体商標を取得
ウィーンから、いまの暮らしの灯りへ
駿河の竹細工は、早くから海の向こうでも知られました。明治6年(1873年)、近代日本の政府が初めて公式に参加した万国博覧会であるウィーン万国博覧会に、日本の特産品として竹の千筋細工が出品されて高い評価を受け、これを機に海外への輸出が盛んになったと伝えられています。細い竹ひごが生む繊細な陰影は、当時のヨーロッパで広がっていた日本の美術工芸への関心とも重なりました。
現在の産地では、昔ながらの虫籠や花器、菓子器に加えて、行燈やランプシェード、風鈴、バッグなど、いまの住まいに合う品づくりにも力を入れています。2018年(平成30年)には静岡竹工芸協同組合が特許庁の「地域団体商標」を取得しました。静岡市は技術の高い職人を「静岡市伝統工芸技術秀士」として顕彰しており、駿河竹千筋細工からは5名が名を連ねています。表紙の写真を撮影した匠宿のように、工房見学や制作体験ができる場所もあり、竹ひごが線から形へと変わっていく手仕事を間近に見ることができます。
前回は岐阜県の美濃焼でした。VILLAGE通信 vol.21 岐阜県はこちら。静岡県の見どころは47都道府県ガイドの静岡県編からどうぞ。次回は愛知県を訪ねます。
参考:静岡市(駿河竹千筋細工、静岡市伝統工芸技術秀士)、経済産業省「伝統的工芸品」指定品目一覧、伝統的工芸品産業振興協会、国立国会図書館「博覧会―近代技術の展示場」、立命館大学アート・リサーチセンター
——Value Village編集部
写真:なまけもの人間/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)




