
VILLAGE通信 vol.23 愛知県
有松・鳴海絞、東海道の町に揺れる藍
本文章內文為日文。
中部編の9回目、そして中部編の締めくくりは愛知県です。愛知県は常滑焼や瀬戸染付焼、名古屋仏壇など、国の伝統的工芸品が多い県ですが、今回は名古屋市緑区の有松・鳴海地区で作られる「有松・鳴海絞(ありまつ・なるみしぼり)」を訪ねます。表紙の写真は、毎年6月に開かれる「有松絞りまつり」の町で撮られた絞りの布。藍の地に白く浮かぶ点や筋、紅の布に咲く花の模様は、どれも布を糸で括って染めた跡です。
名古屋城の築城とともに始まった
名古屋市によると、有松は慶長13年(1608年)、東海道の鳴海宿と池鯉鮒(ちりゅう)宿のあいだに開かれた町です。愛知県の解説では、慶長年間(1596〜1615年)、名古屋城の築城に来ていた人びとから伝わった絞りの技を使い、竹田庄九郎が手ぬぐい(豆しぼり)を作って「九九利絞(くくりしぼり)」として売り出したのが始まりとされています。
街道を行き交う旅人にとって、軽くてかさばらない絞りの手ぬぐいや浴衣は格好の土産でした。有松・鳴海の絞りは東海道の名物として広く知られ、町には絞りを扱う商家が建ち並びました。いまも残る江戸時代の面影を伝える商家の町並みは、2016年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれ、2019年(令和元年)には「江戸時代の情緒に触れる絞りの産地 ~藍染が風にゆれる町 有松~」として日本遺産にも認定されています。
約70種の「括り」が生む模様
絞り染めは、布の一部を糸で固く括ったり、縫い縮めたり、板で挟んだりして染料が入らないようにし、染め分けることで模様を生む技法です。愛知県によると、有松・鳴海絞の括りの技法は約70種類。蜘蛛の巣のような放射状の模様になる「蜘蛛絞」、棒に布を巻きつけて斜めの筋を出す「嵐絞」、布を畳んで板で挟む「雪花絞」などがあります。
一枚の布ができるまでには、図案や型彫り、括り、染めといった工程ごとに専門の職人の手を経て、平均50〜60日かかるといいます。括りの作業はひと粒ずつ手で行うため、同じ模様でも少しずつ表情が違い、それが手仕事ならではの味わいになります。1975年(昭和50年)9月4日、通商産業大臣(現在の経済産業大臣)から国の伝統的工芸品に指定されました。名古屋市の資料によると、愛知県内の伝統産業で最初の指定でした。
要点
・慶長年間、竹田庄九郎の手ぬぐい「九九利絞」が始まりとされる
・括りの技法は約70種類、一枚の完成までに平均50〜60日
・1975年、愛知県内の伝統産業で最初に国の伝統的工芸品に指定
・有松の町並みは2016年に重要伝統的建造物群保存地区、2019年に日本遺産
「SHIBORI」が世界とつながった日
有松・鳴海の絞りは、世界との接点も持っています。内閣府の「地域の経済2004」によると、1992年、地場産業としての絞りを盛り立てようと、名古屋市で「第1回国際絞り会議」が開かれました。世界各地のデザイナーや研究者、一般の市民も加わり、10万人規模の催しになったとされています。会議をきっかけに、絞りを解いたあとに残る立体的なシワそのものの造形美にも注目が集まり、ファッションやインテリアの素材として新しい使い方が広がっていきました。
いまの産地では、振袖や浴衣といった和装に加えて、スカーフやストール、服地、インテリア用品など、暮らしに取り入れやすい品も作られています。毎年6月の「有松絞りまつり」では、町じゅうに藍の布が掛けられ、括りの実演や絞り体験も楽しめます。東海道の宿場町を歩きながら、風に揺れる布の模様をゆっくり眺めてみてください。
前回は静岡県の駿河竹千筋細工でした。VILLAGE通信 vol.22 静岡県はこちら。愛知県の見どころは47都道府県ガイドの愛知県編からどうぞ。次回からは近畿編、三重県を訪ねます。
参考:愛知県(あいちの伝統的工芸品「有松・鳴海絞」)、名古屋市緑区(有松の歴史と町並み、日本遺産)、内閣府「地域の経済2004」、経済産業省「伝統的工芸品」指定品目一覧、伝統的工芸品産業振興協会
——Value Village編集部
写真:Asturio Cantabrio/CC BY-SA 4.0(Wikimedia Commons)




