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箱根寄木細工の箱

【VILLAGE通信 vol.35】木を寄せて、模様にする
神奈川県

神奈川県の国指定は鎌倉彫、小田原漆器、箱根寄木細工の3品目です。

前号の東京が23品目でしたから、隣でこの差です。ただ、三つとも同じ地域に集まっています。

染めないで、色をつくる

箱根寄木細工は、染料を一切使いません。木そのものの色だけを組み合わせて、幾何学模様をつくります。

白はミズキやマユミ、黒はクロガキ、黄はニガキ、赤褐はアカカシ、緑がかった色はホオノキ。

箱根は樹種の非常に多い山です。標高差が大きく、暖帯性の樹も寒帯性の樹も育つ。色の種類が山にあったから、この技法が成立しました。

つくり方はこうです。色の違う木を三角や菱形の棒に削り、束ねて接着して「種板(たねいた)」というブロックをつくる。それを鉋で紙のように薄く削り出す。

この薄い板を箱に貼る。模様は描かれているのではなく、断面なのです。

山梨の甲州印伝(vol.29)は革に漆で模様を置きました。箱根は、模様のほうを先につくってから切ります。順番が逆です。

仏具から、器へ

鎌倉彫の起源は、鎌倉時代に中国から伝わった彫漆(ついしつ)にあるとされます。

彫漆は、漆を何十回も塗り重ねて分厚くし、それを彫る技法。時間がかかりすぎます。

そこで日本では、先に木を彫ってから漆を塗るという逆の順番に変えました。これが鎌倉彫です。

新潟の村上木彫堆朱(vol.33)も同じ発想でした。輸入された技法を、手間の少ない形に置き換える。日本の工芸に何度も出てくる形です。

もともとは仏具をつくっていましたが、茶の湯が広まると茶器に、さらに盆や皿へと移っていきます。

小田原は、木目を見せる

小田原漆器は、ケヤキなどの木地に、透明な漆を薄く塗って木目を見せる漆器です。

岐阜の飛騨春慶(vol.26)と同じ考え方。輪島塗(vol.31)が下地を厚くして木を隠すのとは、真逆です。

箱根の山から良質の木が出たこと、そして小田原が東海道の宿場だったこと。材料と客の両方が、同じ場所にありました。

愛知の有松絞(vol.25)と、まったく同じ構造です。街道沿いの工芸は、土産として育ちます。

3品目、すべて同じ山のもの

箱根、小田原、鎌倉。三つとも、相模湾に近い地域に集まっています。

いずれも、箱根の山の木と、東海道という人の流れの上にあります。

工芸の数は、土地の広さではなく、客の種類の多さで決まる。東京と23対3で並べると、そのことがはっきりします。

次号は埼玉へ。雛人形の話です。

参考:神奈川県、箱根町、小田原市、鎌倉市、伝統的工芸品産業振興協会

——Value Village編集部