VILLAGE通信 vol.7 福島県
大堀相馬焼、青ひびの地に駆ける駒
47都道府県の手仕事を1県ずつ訪ねるVILLAGE通信。東北編の締めくくりは福島県です。福島には国の伝統的工芸品が5品目ありますが、今回はその中から、浪江町大堀で300年以上焼き継がれてきた大堀相馬焼を取り上げます。
元禄の大堀村から、100戸を超える窯場へ
大堀相馬焼協同組合によると、始まりは江戸時代の元禄年間。相馬藩領の大堀村で、半谷休閑が下僕の左馬の製陶技術を生かして茶碗を焼いたことに由来するとされます。藩の保護のもとで窯は広がり、江戸末期には周辺8村で窯を持つ家が100戸を超えました。日々の暮らしで使う器を焼く産地として、藩の外にも知られていきました。
器に描かれる「駒」は、相馬の地と馬との深い結びつきを映したものです。組合の資料では、金彩で描く駒絵は明治の中頃、東京の陶器仲買人の勧めで始まったと記されています。
三つの約束ごと:青ひび・走り駒・二重焼
一つ目は青ひび。素地と釉薬の収縮率の違いから、焼成後に表面へ細かな亀裂(貫入)が入り、器全体を覆う地模様になります。窯から出した器が冷めるとき、ひびの入る小さな音がするといわれます。二つ目は、疾走する馬を描いた走り駒の絵付け。三つ目が、明治末期に陶工の坂本熊次郎が考案したとされる二重焼で、内側と外側を別々に成形して重ねる構造のため、熱い湯を注いでも手に持ちやすく、中身が冷めにくいとされます。
こうした技術と歴史が認められ、大堀相馬焼は1978年(昭和53年)に国の伝統的工芸品に指定されました。2010年1月には地域団体商標にも登録されています。
産地を離れても続く窯の火
2011年3月の東日本大震災と原子力発電所の事故で、浪江町は全町避難となりました。窯元は県内各地に移って制作を再開し、2012年7月には二本松市に仮設工房が設けられます。大堀地区は帰還困難区域のままですが、2021年3月、浪江町内に「なみえの技・なりわい館」が完成し、町に器の拠点が戻りました。
要点
・江戸時代の元禄年間、相馬藩領の大堀村(現・浪江町)で始まったとされる
・特徴は青ひび(貫入)、走り駒の絵付け、二重焼の三つ
・1978年(昭和53年)に国の伝統的工芸品に指定
・震災後は県内各地で再開し、2021年3月に浪江町内に拠点施設が完成
前回は山形県の天童将棋駒を訪ねました。VILLAGE通信 vol.6 山形県はこちら。次回からはいよいよ関東編に入ります。
参考:伝統的工芸品産業振興協会、大堀相馬焼協同組合、浪江町
——Value Village編集部