VILLAGE通信 vol.8 茨城県
結城紬、真綿から手でつむぐ一本の糸
VILLAGE通信は今回から関東編に入ります。最初の茨城県で取り上げるのは結城紬。国内の伝統的工芸品であると同時に、ユネスコの無形文化遺産にも記載された、世界に知られる絹織物です。
奈良時代の献上品から「最上品の紬」へ
結城市によると、結城紬の原型は奈良時代に常陸国から朝廷へ献上された「絁(あしぎぬ)」とされます。やがて常陸紬と呼ばれて鎌倉時代の関東武士に好まれ、室町時代には「結城紬」の名で幕府や関東管領に献上されて全国に知られるようになりました。江戸時代の百科事典『和漢三才図会』では、最上品の紬として紹介されています。
産地は茨城県結城市と、鬼怒川沿いに接する栃木県小山市(旧絹村)を中心に広がります。そのため伝統的工芸品の一覧では、茨城・栃木の両県に名前が載っています。
重要無形文化財の三つの要件
1956年(昭和31年)、平織の結城紬は国の重要無形文化財に指定されました。文化庁の文化遺産オンラインでは、その技術の要件として次の三つを挙げています。
- 糸:すべて真綿から手でつむいだ糸だけを使う
- 絣:絣模様は手くびり(糸を手で括って防染する)で付ける
- 織:経糸を腰で吊り、張り加減を体で調整する古式の地機(じばた)で織る
真綿は繭を煮て袋状に広げたもので、そこから據りをかけずに引き出した無據糸は、空気を多く含みます。糸つむぎ、絣くくり、機織りのほとんどが手作業で、染めだけに近代的な手法が取り入れられています。1977年(昭和52年)には経済産業大臣(当時は通商産業大臣)の指定する伝統的工芸品にもなりました。
ユネスコの一覧表へ
2010年、結城紬はユネスコの「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に記載されました。登録の対象は完成品そのものではなく、糸つむぎから機織りまでの技術と、それを受け継ぐ人々です。国境を越えて評価されたのは、一反の布を支える工程の積み重ねでした。
要点
・奈良時代に常陸国から献上された絁が原型とされる
・1956年に重要無形文化財、1977年に伝統的工芸品に指定
・要件は真綿の手つむぎ糸、手くびりの絣、地機での製織の三つ
・2010年にユネスコ無形文化遺産の代表一覧表に記載
前回は東北編の締めくくりとして、福島県の大堀相馬焼を訪ねました。VILLAGE通信 vol.7 福島県はこちら。
参考:文化庁(文化遺産オンライン)、結城市、茨城県教育委員会、伝統的工芸品産業振興協会、ユネスコ
——Value Village編集部